12月20日。

俺は執務室に篭もり
松本がさぼった分、倍に増えた仕事を
どうにか残り六割までに片付けた。

こんな状況で九時にどこぞへ来いと?


…松本の用が済んだとして、
戻って続きにかかった所で

日付が変わるまでに
すべて終わるだろうか?


この茶は一体何杯目だ。


ため息混じりに
湯飲みに手を伸ばしかけて


無くなり掛けていた番茶が
増えている事に気付く。




「冬獅郎さん。ご苦労様。」


両手で盆を抱え、
飲み終えた湯飲みを運びながら
こちらを振り向くが居た。



?…わりい。気が付かなかった。」



は、ほんの少し前
仕事が山積みの俺の元へ

自分の代わりに傍に居るように

松本に頼まれたらしい。



…何考えてんだあいつは。



、やっぱ悪いが先に
 隊主室へ戻って待っててくれるか。」



俺は息抜きに
外の風に触れるついでと、

を隊主室まで送る。


息抜きというよりは…


どかっと疲れるであろうこの
仕事の後に


俺の帰りを隊主室で待つ


に迎えて
癒して貰いたい


と思った本音は…


やはり、こころの隅に照れ隠して。




冷たい風が息を白くする

長い石畳を、時間を惜しむように


ゆっくり歩く



俺は雪が振りそうだなと、
少し立ち止まって

空を見上げた。




「冬獅郎さん。これを・・・・」




俺の首に、ふわりとした衣が捲かれる。



「冬獅朗さんだって、冬は寒く感じるでしょう?」



「そりゃ・・・少しは・・な。」



の香りに包まれた。



「風邪、ひかないで下さいね。それは
 冬獅朗さんへのお誕生の贈り物ですわ。」



「・・・・誕生日か。」




有って無い様な物


そんな物より
流れる年月が身体を成長させていく


長くもどかしい時の苦痛を
ただ待ち侘びていた




「冬獅郎さんがこの地に召されて、出会えた日に祝福を。」






の言葉が声が
そんな考えだけが降り積もる心の雪を溶かし
優しく和らげていく





「・・・。ありがとう。」






ただ一言
言葉にするのが不器用な

俺のへの精一杯の
気持ちを伝えた。




十番隊隊主室へと続く
長い階段


は俺の一段後を
ゆっくり昇る



が立ち止まるのを感じて
振り向く俺に
は白い腕を伸ばした。




「わたくしの変わりにお傍に居てね。」




細い指が撫でる様に
首に捲かれた
衣に触れて

は祈るように
その願いを託す。



いつもそばに居てやれなくて…
ごめんな…


その想いよりも伝えたい言葉を捜す


俺はその手をこちらへ引き寄せ

上手く言葉に出来無い
心を唇に乗せて




の頬に口付けを。




「ありがとう・・・」




己がここに居るべき意味を
強く腕に抱く



この温もりを
仕事の糧に

明日への糧に






隊主室へを送り届け
執務室へ帰る道は一人


ほんの少しさびしさを感じて



腕に残るの温もりを見詰める。





共に過ごしたかった
せめて今日が終わるまで。



冷たくなった風を頬に受け

首を纏った衣に顔を沈める。






離れていても心はいつも傍に。


そんなの声が
聴こえた気がした




の香りを
胸いっぱいに吸い込んで

別れた後の沈みかけた気持ちさえも

穏やかになっていくのを感じた







「…冬の間はずっと付けといてやるか・・・」



緩んだ顔を照れ隠して独り言




オレは又



隊長と言う名に戻る






                          

                               甘さとかけ離れたものばかりになって来たので、
                               再開後のちょっとだけ甘い?ノベルを先にupしました。
                               なんでヒロインが隊主室に?!と言う謎を少しずつ
                               この先upして行きます。






君の香りをまとって