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から受け取った包みを
大切にに抱え家路へ向う中、

今まで全く俺の視界には認識していなかった
物珍しそうな野次馬達は言う。



そこに見たはきっと


幻だったのだろうと。




夢のように過ぎた一瞬に俺でさえ、そうだったのかと
思いそうにもなる。




・・・・違う。



幻にはさせねえ。




あの人は俺の名を呼んだ。


遠い音色が今もはっきりと耳に残る。

この包みを開ければ




その声が消えてしまいそうで

開く事が出来なかった。




色々な想いが溢れ、俺は十日あまりの間
深く眠りにつく事が出来ずに居た



皆が寝静まった後
今日もまた、この長い包みを抱えたまま



一人近くの川辺に座る。








迎えにいくと誓った

嫁になって欲しいと





希った



それでも今ここに


は居ない。



己の非力さが夜風と合わさって
尚沁みる




瀞霊壁を越えなければ
とは住む世界すら異なっている。



掛けた心の意味を知った分



そこに届かない今の自分を思い知らされた。




今あるのはがかわりに残したこの包みと、
非力で幼い自分



この重たい包みは自分の掛けた
部分の助けになるだろうか




今俺に出来る事は
の声を忘れないと誓う事





そう心に諭して俺は紐を解く決意を
ようやく固めた





「・・・・・これは・・刀・・だよな?」





当時の俺には、住んでいる地区が比較的
治安の良い場所だったからか
流魂街でもあまり眼にすることも無く、


ましてや手にする事など今まで一度もなかった刀が

えらく馬鹿でかく見えた。




はこれを
・・・この子と呼んだ


はこれで
自分の身を護っていたのだろうか




は死神なのか?





いや・・・死神装束を纏っては居なかった。



そんな事を考えながら、刀を抜こうとしたが、

鞘から刀抜けずに居た。




「・・・・?」




抜けないとなると意地でも抜いて見たくなる
という物だからか


躍起になって抜こうとする



だが力を入れれば入れるほど
酷く体力を奪われたような疲労感が
体中に押し寄せる。




「どうなってんだ?」



この抜けない刀をは何故
俺に託したのだろう





息を切らせ、胡坐を掻いた




何故抜けないんだ?



膝に乗せた刀に問いかける。


「…俺だから抜けないのか?」















『----力を入れるのではない。己の霊圧をこめよ----』













さらさらと川辺一面の草を撫でる風の音の中
音無い声を意識が捉えた




「!誰か居るのか?!」




辺りを振り返る
変わらずそこにあるのは俺と
この刀だけだ。







『-----声は届くか--冬獅郎』







「・・・・!」






この刀が俺の名を呼んだのか?












『--------我を従えたくば、------己の淵へと眠る霊圧を呼び起こせ。』





「意味がわかんねえよ・・・。」



刀ってしゃべんのか?
霊圧って俺に有るって言う霊力の事か?
霊圧を呼び起こすってどうすればいいんだ?





この刀を従えて




俺はどうしたいんだ?





俺は・・・









俺はを迎えに行く
そう誓った。







『-----希えよ。己の進むべき道を。-----呼べ、我の名を。』





意識に響く音の無い声には

疑問を持つ余裕も無く


その問いの意味を考える事を
俺の頭が優先させていた。






を強く想う





へと続く道に、立ち憚る壁はすべて退け
いつかその高みへと



この手に掴む為に






「俺に力を貸してくれ・・・・」







眼を閉じて祈るように
刀に告げた



『----己の思いを信じ聞け----我の名を叫べ


 ----呼び覚ませ、  己を!!!」



    
俺に眠るチカラよどうか
俺が進むべき場所へ
導いてくれと



俺は強く・・・







・・・・希う






俺は瞼の奥で一つの光を見つけ出した。






 「・・・・・霜天に坐せ!!!


             氷輪丸!!!   」






辺り一面を凍らせて、俺の中に眠っていた霊圧が
身体中に迸る

目覚めたその奥底から響くその名は







  氷輪丸








大気が振るえ、剣先に集まる水の粒子が氷へと換わり

やがてそれは巨大な龍へと姿を成す









『-----我の名を忘れるな。冬獅郎』










チカラの使い方など理解する術も無く
刀の柄を両手で握り締め

ただそれを
支えておくのが限界だった





「忘れねえよ!必ずお前を使いこなしてみせる!」





聞き終えたかどうかは俺には解らないが
氷輪丸はまた元の刀に戻り


辺りはまだ凍ったままの河原に

砕けた氷が散乱していた




張り詰めた体中からすべてチカラが抜け落ち
俺はその場にへ垂れ込み

ただの刃となった氷輪丸を

鞘へと収めた。






その後
凍った草を踏み鳴らし

俺を囲む幾人かの死神達に気づく


それは一つの壁を越え



瀞霊廷へと道を進める意味でも有った








         

「こいねがいて」
私は最初読めませんでした…(汗)
ちょっとだけ編集しましたが、気付く方はいないだろうなぁ。