夜一の失踪後、浮竹は
一人きりになった

今まで以上に気にかけた




自分が魂送し、転生へと導き
ずっと見守ってきた

その魂への情は



長い長い時間をかけ





少しずつ





少しずつ…







深い想いへと換わって行った

















、なぜお前は、鳥の姿になった時、いつも俺の髪にとまった?」






「浮竹様の髪が少し似ていて安心したから…」





「似てる?何にだ?」




「…内緒。」




頬を染め照れながら




幼さを残して、花のように微笑む


浮竹はずっと
見守っていてやりたいと
想うようになっていた



この時のが、一体何に照れていたのか。



そんな事は気にもならなかった。



を護ってやれるのは自分だけだと
思って居た




そう…



この日までは。


















翌日誕生日を迎える浮竹は
副隊長を連れて
京楽を酒場に誘った


「俺は熱い茶を頼む」


入り口で場違いな注文をしながら
浮竹は店の奥の座敷に腰を下ろす




「珍しいっスね〜隊長がこんな所に来たがるなんて。
とうとう覚悟決めたんスか?サマの事。」




真剣な表情の浮竹を余所に

海燕は案内された座敷に座るや否や
品書きを眺めながら

上司へ図星の一言で軽く煽る




「ああ。今日こそは…。に告げるさ…。」



部下の言葉に顔色を変える事無く
出された熱い茶に手を伸ばし浮竹は答えた





「相変わらず奥手な男だねぇ。まだ言ってなかったの?
まあ〜酒でも飲んで、勢いで行けよ。」




「そうっスよ隊長!オレ、今日は飲酒を許可しますから!」




いつまではっきりさせない、古くからの友に
京楽はやんわり喝を入れ

普段は身体を気遣って、酒を勧めない海燕と共に


二人揃って浮竹の前に
さあ飲め!と言わんばかりに
ドンっと酒を差し出す






「こんな大事な日に酒なんか飲んで行けるか!」




飲む前から酔っ払い気味の二人に呆れる浮竹に




「隊長…ココは酒飲むトコっスよ!」




海燕はすばやく突っ込みを入れる。








「そんな怖い顔してると逃げられるぞ、浮竹。」



「女なんてのは…黙って俺に着いて来い!で、いいんスよっ!隊長!」




次に女を口説く時、今言った海燕の言葉を使おう…
などと、京楽は見当違いな事を一瞬考えた後


硬い表情のままの友に横目をやり
肩をポンとひと叩き



珍しく真剣な顔で諭す





「…まあ、肩の力抜けよ。」




「・・・・・・ああ。」




目の前に置かれた酒を
グイっと一気に飲み干して
浮竹は席を立つ






「行って来る。」






お前達のお陰で決心が付いた
ありがとな…




その言葉は
を共に連れてと

浮竹は心の中に置く



「ええっ!?隊長ぉー?!もう帰るんすかー?」



「浮竹ェ色んな意味で頑張れよっ!
もぉ〜なんだったらそのまま、がばぁ〜っと行っとけ!」


「京楽さん…それはちょっとどうかと思うんスけど。」




振り返る事無く軽く手を上げ
浮竹は店を出る





「あいつが帰ったら冷やかしてやるかぁ!なぁ海燕!
よし!今日は俺がおごってやろう。どんどん飲めっ飲め!」




「そうっスね!後でこっそり覗きにでも行っちゃいますかー!」



賑やかに見送る二人の声は
しばらく店内に響き渡り夜の帳を迎える



























四楓院家に離れを構え
は普段
その一室で疲れを癒していた


彼女が生まれてからずっと

幾度と無く世話を焼いて来た浮竹は
を訪れる度
四楓院家の者に歓迎される

それはこの日もやはり変わらない



様は先ほどお戻りになられました。」

「そうか。ありがとう。」


浮竹の到着と同時に
使用人が声をかける

分け隔て無く
皆に優しく接する浮竹は
ここでも又、慕われていた。





長い廊下を抜け
の部屋の前に辿り着く

扉の前で大きく息を吐き
呼吸を整え声をかける






、帰ってるか?」




「ええ。どうぞお入りになって。浮竹様。」






扉を開くと、先ほど帰路に
着いたはずの

身支度を整えている姿が目に映る





「急ぎの用が有りますので、せっかくお越し頂いたのに
慌しいご無礼をどうかお許し下さいね」



いつもなら必ず、茶を点て
笑顔での持て成しを
決して怠らない
座る事もせず慌しく動いている






また王族へ呼ばれているのか…
には問わず
浮竹はそう思った





「貴族と王族の行き来は辛くないか?」





「つらくなど有りませんわ。
王族と皆の架け橋になる事は、わたくしも嬉しい事です。」



は髪を結い直しながら
浮竹に振り返って微笑む





、このままでは王族へ入れられるか、四楓院家を次ぐ事になるぞ…」





「王族へは入りたく有りません…わたくしのわがままですが
四楓院家を継ぐ事も・・・」



王族と貴族を行き来しながら
四楓院家の当主代理になっておよそ50年
は陰ながらも大きく四楓院家を支えて来た



しかし姉はに自由に生きろと告げた



もまた、新たな道を開くために
まさにこの日
やるべきことが有った






その先に作る道へ思いを馳せ
ぼんやりしていた




浮竹は静かに大きな選択を伝える
















「俺の…妻にならないか…?。」



「え…?」







驚くの両手を取り
穏やかな目で浮竹はを見つめた



ここにもう一つ、別の歯車が

今廻り始める










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日番谷君出てきません
いつまで続くのか主役の不在…
あんまり長くなったので
後編へと次回に続きます。




廻り出したもう一つの歯車