輪廻






どの位飛んだろう…




ここは現世?



あの人に会いたい


ただそれだけを願って飛んだ



この姿ならあなたに会えると




そんな気がしたから。






凰華と同調したは、現世と尸魂界の狭間を抜ける



ただ一人



ほんのわずかに


会いたいと願わずにはいられない、その人を感じた








は、広く色の無い空間の中で
ぼんやりと影の無い光を目指し飛ぶ








どの位その人は待っただろう






その人は




その人は…








ここに居た。











どうして?





わたくしを恨んだせいで尸魂界へ
行くことが出来なかったのですか







わたくしを忘れる事が出来たなら、







今のあなたを救う事が出来ますか?















冬獅郎さん………!!!














…俺は…どうしてここに居る…




どの位の時が通り過ぎだろう
覚えているのはただ、遣り残した事があるということ


色んな奴らが俺を狩りに来る


俺はそれらの誘いに乗る気が起こらない


遣り残した事…


それが何か、今の俺にはわからない



あの世とやらに行く事も出来ず、この世にも戻れず




ただ







この空間を漂う






また

何かが



俺を狩りに来た












今までとは違うのは、それが大きな翼と長い尾を持った鳥だと言う事



それが近付くにつれ、次第に俺は懐かしさに包まれる





なんでだ…?


俺、何泣いてんだ?



鳥が俺の前で止まるころ、

氷の箱に閉じ込められていた魂が
息づき融けてゆく様な気がした








「狭間に留まる者よ…あなたの望むままに…」






・・・冬獅郎さん


どうか・・・




・・・わたくしだと、気付かないで。







わたくしはもう、あなたを苦しめたくは無い


あなたを救いたい


はそう願い、冬獅郎にすべてを告げることを避けた








「俺は…遣り残した事がある…。それは何かは、わかんねえ…。ただ、お前に会って…。」



「わたしにあって…?」







なんでだ…?


だから、なんで泣いてんだ?俺は??







「何かわかんねーけど、すげー…安心した。…お前が鳥だから、男が泣いても笑われずにすんだな。」




冬獅郎はに、あの頃と同じ笑顔を向ける






自分が居なければ苦しめる事も痛む事も無かった人が、

時を越えて姿を換えて、出会った自分に…


は胸が締め付けられる想いだった






「お前は…なんだ?」






「わたくしは…貴方の望む道へと導く者…あなたの望みを…。」





「俺の望みは…。遣り残した道を…開いていく事を望む」






締め付けられる気持ちを、胸の奥へ押し殺して
震える声をどうか悟らないで


どうか…



共に生きて傷ついたあなたよ

どうか

幸せになる道を選んでと


は願わずには居られなかった






「それはまたあなたを傷つけ苦しめる道だとしても、それでもあなたはその道を選ぶのですか?」







「俺はあいつが居ればいい。…?何言ってんだ俺は…?あいつって誰だ…誰…」












冬獅郎の胸に開いた穴へと
光が集まり


激しい衝撃が襲う






















「っっ!ーーーーっっっーーーーー!!!」















光は解き放たれ

冬獅郎はその鳥が
だという事

自分の残した悔いが何で有るかと言う事を



再び魂に捉えた






「俺はっ!!お前を護れなかった。それが、悔いだ!!!」





無の空間で姿を換えた愛しい者へ
時を越えて伝えられずに居た


想いを叫びに変えて
へ伝える





「それはあなたを巻き込んだわたくしの罪。どうか幸せになれる道を…望んで…」







「お前・・そんなナリになっても変わんねえな…。死んでも後悔すっかよ!!
何度生まれ変わったって言ってやるよ!」






「お前と出会って、俺は幸せだ!!!」





「望みが叶うなら…お前を護れるチカラが欲しい!
お前に出会えるなら、
俺は…どんな壁だって越えてやる!」






俺とお前の世界を重ねて






お前と共に生きる場所へと導いてくれ






流れ行く時間は繰り返す事が出来ずとも


たとえ記憶が最下層へ沈んでも


二人姿が変わっても





と共に




魂の真実と希求







「魂の望みを…導きましょう。」






はその大きな翼へ冬獅郎を乗せ
空間を越える


「チカラを生み出すあなたの一部を…預かりますね。」


「ああ。構わんお前を護れるなら、俺は何を失っても怖くは無い」






冬獅郎を纏った霊圧はへと流れて行く


追懐の情と共に、深い眠りへと落ち

尸魂界へ抜ける頃

霊力を預けた冬獅郎の身体は



小さな小さな赤子へと換わる











あなたの望んだチカラを導く



凰華の対を得られた時





あなたへ捧げに行きましょう




別の道を歩くわたくしを





現世の記憶を失くしたあなたが


それでも再び必要として下さるなら

わたくしは幾度の季節をめぐっても





ずっと




今度はわたくしがあなたをまっているから…
































尸魂界へ戻り流魂街へ冬獅郎を降ろし
空へと高く舞い上がった



一つの大きな嘆きにも似た啼き声を響かせた後
瀞霊壁を超える




双極近くの丘
自分を待つ姉のもとに降りたち
身を委ねた




「…全く。お前のお陰で大騒動じゃ。気が済んだか?。」





「ごめんなさい…夜一お姉さま…。わたくし…。」



「双極の矛が…燬コウ王が死を司る鳥ならば、お前は…
生を司る不死鳥か迦陵頻迦というトコじゃな。」





四楓院家の紋が入った八角の鏡を用いて

を元の姿へ戻しながら姉は笑ってそう言った。



「かりょうびんが…?いけないっお姉さま、おじいさまにも心配を…」



「案ずるな。元に戻ればお前はまだ子供じゃ、 わしと喜助でどうにでもなるからの。
鳥の姿で居た記憶も消える。」




元に戻るはずのの身体は

幼い子供から少女へと成長していた。



傍には彼女を鳥の姿へ換えた短刀が有った。



「・・・・・・・・・。お前少しばかり育ってしまったな。」



やれやれ、また問題が増えたと頭を抱える姉をよそに、



は短刀を両手に抱き

頬を添え微笑む






「この子は斬魂刀…凰華ね。…夜一おねえさま、この子をわたくしに下さいな。」




何かを悟った夜一は空を仰ぎ双極を見つめる




、お前…記憶が?…斬魂刀の名を聞いたなら、もうそれはお前の物じゃ。
ただし、死神には……まあよい。お前の好きにしろ。ただし、あんな無茶するでないぞ。」





「…?」


「さて、言い訳を考える時間が無くなったのう。
ほとぼりが冷めるまで逃げるぞ!着いて来い、!」



騒ぎを聞きつけた部隊が近づいてくるのを感じた
夜一はを促す





「はいっ!」









氷の結晶が粉雪となって降り注ぐ寒い夜
物語の天女は


始まりの消えた追憶となる














            


ようやくここまで辿り着けました。
この次ぎの次ぎでやっとこさ
「物語の天女」へ繋げます。
流魂街での再会前ヒロインに何が起きたのか
解明します…