夢の中でも






あなたが居なくなってしまったら




そんな悲しい夢を見るとき
決まって真夜中に目が覚める


ゆっくりと開いた瞳に映るのは
太陽を包み隠した暗い夜の闇

目に映るもの全てが漆黒で
夢から覚めていないのかと、より不安が押し寄せる


瞳を閉じても開いても変わる事無く
毎晩そこに有る夜の闇は

視覚を閉ざして



研ぎ澄まされた聴覚と触覚だけが
不安からの救いを求める




「冬獅郎さん…何処?」





夢でなければそこに居るはずの
愛する人


覚醒しきらない脳裏に
現実と夢が交差してする



手を伸ばしても触れる事が無いままなら
闇に飲まれた夢から
現実に戻れない気がして

は恐ろしくなった




泣き出したくなる気持ちは
再び大切な物を失う事への不安


不安が現実になるのを恐れて
手を伸ばせずに居る


覚めない夢が有りそうで、眠る事さえ怖くなる




冬獅郎さん…




祈るように震える体の一部を通して
聴覚がそれを捉えた


がそこに居る事に安心して
穏やかに眠る冬獅郎の吐息が

夜の静けさの中に



やさしく響く




「…冬獅郎さん」


伸ばす事を躊躇っていた手を

寝息の聴こえる唇を捜し
ほんの少し触れて


現実を確かめる



柔らかな感覚と、温かな息が指に触れた




「冬獅郎さん…よかった…」


そこに在るのは
夢ではない確かなもの


「…ん……?」


あなたの夢の中の私はどうか

いつでも幸せそうに
微笑んでいます様に




ようやく闇に慣れて来た視覚に
は冬獅郎の眠る顔がぼんやり映った


息が詰まるほど込み上げる安堵を


寝息がうまれる唇にそっと
自分の温もりで重ねて




「ありがとう…冬獅郎さん」




傍に居てくれる事に、酷く安心して私は
心ごとあなたに身を委ねてしまう

この先どんな闇が空を覆っても
あなたはきっと




私の光になる




「…どうかしたか?」

「怖い夢を見て…」

「そうか…」



すぐ隣にある私の顔から
あなたは黙って粗放を向いてしまうけど

理由を聞く事をしなくても
ただ静かに腕を差し出して
温もりへと引き寄せてくれる

何よりも、どんな時でも、誰よりも…
私を心で護ってくれる人




あなたの寝息を聞きながら
緩やかに心穏やかに
夜の闇の中にある光へと、意識を委ねて

また共に眠りにつく



どうか二人、いつまでも傍に居て





形の無い



夢の中でも














   



40000hit感謝記念NOVELです
裏じゃなくってごめんなさい。
しかも何だかブラックです。

非常に多忙で、荒んで行く管理人の日常を
沢山の方の応援と励ましに、支えられました。
疲れていたり、心穏かでない時も
ここに来て下さる沢山の方々に、
元気を頂いてます。
このサイトで少しでも、幸せな時間を過ごして頂けるように
これからも頑張ります。

訪れて下さった全ての方に捧ぐ!

2005.11.04
十番隊隊主室 一片