「うーん…
 ここら辺のはずなんだが」



何でこんな山奥に虚をとっ捕まえに
行かなきゃならんのだ

先生直接の指令で無ければ
絶対に来なかったぞ俺は


真央霊術院を卒業後

浮竹は
学院創設者である,
山本元柳斎重國の元

修行を重ねていた



浮竹は床に伏せる事が多く、

京楽との修行の差が出る事も有った

そんな自分の身体に腹を立て
京楽に八つ当たりを吹っ掛ける


そんな事下らない事での

奴と馬鹿げた喧嘩の末

俺はとうとう師のお叱り受け


山奥の虚の始末に一人で
向う破目になった




さんざん迷った挙句

通り過ぎそうになりかけ
あわてて数歩戻り

一つの朽ち果てた廃墟を見つける




「…こんな所に虚がいるのか…」




何も感じない
本当に虚が居るのか?


浮竹は半信半疑で廃屋に近づく


その建物に触れようとした瞬間



大きな霊圧が浮竹を跳ね飛ばした




「−−−うおっ!」



余りに不意を突かれて

我ながらなんとも情けない声が出たものだ




『---あなたは−−−チガウ』




そこに居たのは

虚では無く、胸の中央に
大きな穴を持った

酷く美しい女だった


女は恐ろしく冷たい眼で
浮竹をみつめる



なんて霊圧だ…



霊圧を通して
体中に響く女の冷たさは

痛さと悲しみに満ちていた





大切な物を無くした魂

想いの強さが虚になることに
抵抗したまま

ずっとその場で

想う相手を待っていたというのか…




「…おれがお前にしてやれるのは
 あっちへ送ってやる事だからな」




『---邪魔をシナイデ---私はどこにもイカナイ---』



…師は確か

虚を捕獲後、自分のの元へ届けろ
と言った


あのじじい…


いやいや、全く先生は

この女と知り合いかなんかだったのか?

厄介ごとを押し付けたもんだ



そう思いたくなる気持ちは
この魂の


酷く痛く


悲しい影にかき消されて行く




「ずっとそこに居ても
 お前が想う相手には
 永遠に会えないままだぞ?」



浮竹の説得も空しく

虚か寸前の女の気持ちが
変わらずにいる


浮竹は已む無く
死神として
彼女を浄化する事を選んだ


激しい抵抗に、
師が修行の中と命ずるだけの事は有る

斬魂刀による魂葬は

困難を極めた
…かに思われた

しかしそれは、意外な所で変化がおきる


『---その髪のイロ--−そこへイケバ------あの人も---

      イルノ---?』



浮竹の髪が女を掠めたその時

抗いが一時止まったのだ


現世ではこの歳での白髪が

珍しいからだろうか?



ひとときの隙を突き
どうにか魂葬に導く


あっちでアノヒトとやらに、遭えるといいんだが…


斬魂刀による強制的な力で
魂をあちらへと送る



冷たく悲しい霊圧はその後もしばらく
消える事無く
浮竹に響いていた




「…嫌な仕事だったな…」



本来の死神の仕事とは、何かが違う


師の元へ送ったのだから
女の言うアノヒトとやらには
きっと遭えないだろう


後味が良いとは言えない状況に
どこか腑に落ちない

理由もわからず
自分の中で空しさが残る




浮竹は即座に尸魂界へ戻り
元柳斎へと詰め寄った







「先生!なんだったんです、あれは?!」




確かに元流斎の元へと
送った筈のそれは

すでに師の手元には無かった




「あれはすでに春椿、の腹の中じゃよ」




「腹の中?!」



食ったのか?
食わすために俺に捉えよと
俺に命じたのか?

浮竹は、思いも由らぬ師の言葉に

一瞬、訳の解らない解釈をした後

今一度、考えを直す




…春椿…?


どこかで聞いたことがある


春椿…。



春椿…?







四楓院家当主の後妻?!
貴族へ嫁いだ四楓院 春椿様か?



周囲の反対を物ともせず
王族という肩書きを
愛するものと、共に生きるため
捨てたと聞く




「何故です!先生!」



「望んだのは椿じゃ。お前にもいずれ解る時がくる。
 もう良いから下がれ、小童。
 今日の修行は終わりじゃよ」



ろくに話も聞けぬまま、早々に師は浮竹を追い出す




なにが修行だ




それが先生の正義かと
訊けぬままに




王族に産まれた女だけが、持つ事を許された力

高密度な霊力を持つ魂を望み
その身に宿し

更なる一族繁栄の為の転生

腹に居る時間は通常の期間を
軽く十倍を有する





そして
大きな霊力を受け継ぎ、生まれ落ちる頃に



浮竹は京楽と共に
学院出身初の

護延十三番隊隊長へと

揃って昇り詰めて居た



魂を導いたあの時の
疑問は


今この時、自分の足元に
頬を摺り寄せてくる

えも言えぬ愛らしさを振りまく



産まれて程無い幼子によって、すっかり消え去っていた




!うわっ!今日届いたばかりの羽織に
 よだれを付けないでくれ!!」





浮竹は生まれ変わった幼子を

歳の離れた妹が出来たように
可愛がった



「四楓院 
 うんうん。いい名だ。
 

 おまえきっと美人になるぞ」



を産み落とした後

四楓院家当主の後妻
春椿の命は

その霊力を我が子に引き継ぎ

間も無く最期と迎えた









には歳の離れた前妻の娘、姉が居る
大層悪戯好きな姉だ



…確か夜一とかいったか?



雪のように白い


相反する事は在れども
決して似付かぬ

褐色の姉


あれが
何かまた、悪戯を
仕出かすのではないかと

心配せずには居られず


浮竹は暇を見つけては
度々の面倒を

自ら進んで見てやる様に
なっていた




目じりがすっかり下がった
浮竹の姿がそこに有る



京楽には散々

阿呆呼ばわりされる事になる理由だが…



この先この幼子が
どんな娘に成長するかを
少しばかり楽しみにしながら








 
  
         


日番谷君が一切
出てきてません…
未だ救出できず(汗)
もうちょっと待って下さい。
ココの浮竹さんは日々壊れていきます。
ほんとごめんなさい。