「う…ここは…」



そよそよと静かな風に吹かれながら
冬獅郎は目を覚ます


「…冬獅郎さん?大丈夫ですか?」


?」



木漏れ日の陰になったの顔が
冬獅郎を覗き込んだ





外はまだ明るいが、真昼のような暑さは無い
夕刻前と言った所だろうか







冬獅郎はこの日の朝から

隊舎に残って任務に出ていない隊員すべてを
隊長自ら、一人一人相手に向き合い
剣術の稽古をつけていた



それが何故に、俺はの膝に
頭を乗せて眠ってるんだ?



今朝からの予定を頭の中で整理して
冬獅郎はぎょっとする






「まだ仕事中のはずだ!」






勢いよく起き上がろうとした肩に
は腕を伸ばして
冬獅郎を止め、優しく膝へ寝かせる





「大丈夫ですわ。冬獅郎さん、安静になさって…」





皆が順番を待って、日陰で休んでいる中
冬獅郎は一度も休む事無く
五時間通して、九割の隊員を
続けて相手にした。





真夏の炎天下の中
死装束は恐ろしく太陽の熱を吸収する





冬獅郎の霊圧の、変化を感じた
案じて駆けつけたまさにその時
冬獅郎は倒れ、
救護班が呼ばれた




「幸いとても症状が軽くてよかったですわ。」





こうして涼しいところで安静にして居れば
時期回復するそうです。と、

塗らした手拭いを冬獅郎の額に乗せる






「まだ仕事が残ってる。寝てらんねえよ。」




ひんやりした手拭いを退けて
再び起き上がろうとする冬獅郎に

は残った仕事はすべて、
自分が代わりに
終わらせた事を伝える




「皆が手伝ってくれました。心配なさらないで。」


「…格好悪ぃトコみせたな。」



決まりが悪そうな表情は
一度は取り除けた手拭いが隠す




はそんな冬獅郎を
扇でゆっくりと煽ぎながら

見守る様に穏やかな
視線をなげかける




「格好良いですわ?…でも余り無茶をしないで下さいね。」





何を格好よいと思ったのか
冬獅郎には解らなかったが

風に靡いた髪を、耳に掛けながら

少し離れた十番隊隊舎を
ぼんやり眺める


冬獅郎は見上げて思う


無茶をするのは…お互い様だろう、と。




冬獅郎は、ふうーっと
大きなため息を一つ吐いて
いつもとは違う水分の足りていない
乾ききった身体に気付く




、水。」






救護班に水を掛けられ、びしょ濡れになった
冬獅郎の髪を優しく撫でながら

『水分は少しずつ飲ますように』と
四番隊に言われたは、

少しの間考えて


水の入った竹筒に、自分の口をつける





「おい?、飲むのは俺…」






冬獅郎の声を遮ったのは
の温かい唇と

冬獅郎の喉を、柔らかく通り過ぎた潤いだった




「こうすれば、横になっていても少しずつ飲めるでしょう?」






一瞬固まって状況をようやく理解し
顔面を真っ赤にした冬獅郎に

は唇に指を添えて、にっこりと微笑みかける





「…ばかやろう。…そんだけじゃたりねーよ。」




眉を顰めた、憎まれ口は
面映さを隠すため



水が欲しいと言った時すでに

概ね体力が回復し隊舎へ戻ろうと
思っていた冬獅郎だが、この状況で

予定が変わらずに居られる訳が無い








「あと少しだけですよ?」



「…まだ。」




「…ぅ…ん…」





誰も居ない修練上の片隅
が望んで、一本だけ植えられた
大きな木の下で

竹筒から移される水の冷たさと

暖かい唇の温もりが交差する





「ん…冬獅郎さんっ…飲みすぎです。」



「まだ残ってるだろ?」




冬獅郎は残った水を持つ、の手に
自分の手を重ね軽く振ってみせた


最初に困らせたが、何時の間にやら
普段通り冬獅郎に困らされている。






「飲みすぎるとお体に悪いですわ。」



「お前のせいだな、。」





なぜ?と悄垂れる
意地悪く言う冬獅郎




「まだお水含んでませ…んっ…」



この方が回復すると、冬獅郎は
の頬にふれ、自分へ引き寄せ
ありのままの撫子へ口付ける





「もう少しこのまま…横になってていいか?」






また少し呼吸が上がった冬獅郎は
胸元の着物を緩めながら


暫時の暇、多幸に過ごして

ほんの僅かな甘えを求める



冬獅郎の汗を拭いながら、
自分の膝の上でよければ、いくらでも
休んで下さいねと、笑う







「冬獅郎さん、お疲れ様でした。」





瞳を閉じて冬獅郎の頬に
優しくそっと唇をのせて





とある盛夏の夕刻

から冬獅郎への




小さな恩賞










  


柚○様に捧ぐ貢ぎ物に加筆しました。
柚○様限定お持ち帰り可です。
キス魔と化したちゃんと日番谷君、日射病を甘く見ちゃいけません。
アンタ達死ぬわよ!…続きを書き終えてます。裏じゃないですが、気になる方が
おられたらupしようかな…?
ご褒美