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「こんなに集まるのなら、推薦試験でいけるよなァ、浮竹?」


「ああ、全くだ」



鬼道衆により、大きく結界が張られた
護廷十三隊総合鍛錬場

『立会人』と書かれた席に座る
浮竹から1つ、とばした場所で
副官を連れた京楽春水が、眠そうに問いかける



一方、未だ始解の出来無いで居た
十三番隊朽木ルキアは
「勉強になる」と浮竹に連れられ
隊主試験の会場に同行したものの


両側を浮竹、京楽に挟まれ
どうにも落ち着かず辺りを見渡す


立会人席から少し離れた場所に
自分の義理の兄を含めた、隊長達が
各々試験の始まりを待っている

より息苦しい圧迫感に、ルキアは居心地が悪くなった


「あの、浮竹隊長。自分がここに居るのは、場違いな気が…」


「そう気に病む事は無い、朽木!
試験官は俺と京楽なんだぞ?
あいつらだって、言ってしまえば見物人だろう?」



ただの見物人なら、追い返しただろう浮竹も
ここへ来た顔ぶれが
これから行われる隊主試験の慮外に備え

何時でも対応出来る様にと
見守りに来てくれたのだと

ただ一人、席官では無い事に沈んだルキアの肩を
にっこり笑って軽く叩く






「こりゃ特等席ねぇ〜。あ、ルキア!場所変わってくんない?」


陽気な浮竹を、軽く上回る明い声が
ルキアの後ろに立った


「えっ?!あっ…」



丁度浮竹と京楽の真ん中に、座っていたルキアを押しのけて
松本乱菊が堂々と割って座る


「ごめんねルキア。今日は特別な日だから」


「は?…はい…」


乱菊に首根っこを掴まれ、振り替える間も無く
開いている席へと追いやられたルキアは
目をぱちくりさせている



「もうすぐ受験者が来るそうよ?」


は?」


「最終試験の書類点検が終わり次第来るって」


「…そうか」


未だに姿を見せない
あるいは試験官を辞退したのだろうかと
浮竹の淡い期待は、乱菊によって

あっさりと否定される


がっくりと項垂れる子供の様な上司は
さすがに見慣れていたルキアは、そんな事よりも

結果によって隊の行く末が
大きく変わってしまう隊主試験だというのに
副官がこんな所にいていいのか?!


とは…とても突っ込めない自分に対して
何事も気にせぬようにと、言い聞かせる事にした
















その頃、一番隊隊主室では
何枚かにまとめられた書類の束に
目を通すが居た



「執務、鬼道、体術、霊圧、その他適正試験十科目…
すべて文句無しの成績ですわね」


初めて見る硬く冷たい表情をした
山本元柳斎重國は厳しい顔を返し

ゆっくりと腰を上げたすれ違いざま




「足らぬのは経験じゃよ。、それを見極めてやるのが
お前の役目じゃ。…加減はいらぬぞ」



一言を残し、肩から掛けた羽織を翻すと
闘技場へと向った



書類を机に置き、入り口から背をむけたままの
案じて振り向く一番隊副隊長へ
後からすぐにむかうと告げて

はまた、一人静かに眼を閉じた













「それにしても…遅いな」


なかなか姿を見せない
浮竹の不安が始まる


やはり辞退したのだろうか?
もしもそうで有るならば、俺にとっては
願ったり適ったりだが
せめて…顔くらいは見せて欲しい



「また始まった!浮竹隊長の心配症。さ、気にせず飲みましょう!」


席に着いて五分とたたぬ間に
浮竹の隣では京楽と乱菊が
揃って酒を盛り出す


「京楽隊長はともかく、この人は
副隊長としての自覚が無さ過ぎです」


あきれて嘆く七緒を
酔っ払い二人の先に座る浮竹が
眉をしかめて言葉を送る


「伊勢、お前が立会人になった方が、まったく適任だな…」



自分でもそう思うと、答えようとした七尾より先
ただ一人誰より冷静に
闘技場を見つめていたルキアが

浮竹に声を掛けた


「浮竹隊長!」

「……ああ」


その時、試験会場を覆う結界に
重い威圧感が触れ
それぞれ別の方向を向いていた隊長総員
揃って一処に目を向けた







「これより…隊主試験を行う!!」





杖に姿を借りた、尸魂界最強最古の斬魂刀が
山本元柳斎重國の足元を敷く礎石を
高く突き鳴らし、隊主試験の始まりを知らせ

見守る者達の緊張を煽り立てる



「さあ、これから飲むわよ!って時に…酔いが醒めたわ」

「当然です!!何しに来たんですか、あなたは?!」


渋々器を置く乱菊を、七緒が叱る


同じ様に徳利から手を離した京楽は
少し離れた場所から入って来た総隊長の方へ
身を乗り出し、菅笠を上げて目を凝らすと

七緒が怒る事さえ、気にも止まらない理由を
静かにぽつりと呟た




「こりゃまた…エラく小さいねぇ…」



山本元柳斎重國の後ろから
空を覗く太陽の光を浴びて、透き通る白銀色の髪が


ゆっくりと前へ出る


一瞬誰もが現れた受験者に、我が目を疑った

その姿は身の丈四尺にも足らないであろう
小さな少年だ



「…どう見ても子供だな。いや、しかし何処かで見た様な…」





立会人の二人だけで無く
そこに居た誰もが
総隊長の隣に立つ受験者から、固まった視線が逸らせない


「あ、あれは…!」


ただ一人、驚く声を上げたルキアの隣で
浮竹はどこかで有った筈のその少年が
一体誰であったのかと、懸命に記憶を辿る



しかしすぐに思い出せず
物忘れが激しくなる年には、まだ早いだろうと
別の葛藤で頭を悩ませた


「うーん…一体どこで…」

「浮竹隊長!!」


流した白い前髪の下
黒い眉がうんと皺を寄せている
見かねたルキアが、浮竹に救い舟を出した


「あの者は、百年に一人と言われた例の天才児です!!」

「…天才児?」


素っ頓狂な顔をして聞き返す浮竹に
ルキアは困った顔をして
答えの手がかりを付け加える


「統学院卒業前に卍解を得たと言う…」

「………おお!あの時の、卒業試験の子か!!」



一瞬はっとして、ようやく浮竹の顔が
明るい物へと移り行く




幾年か前の統学院卒業試験で
大虚を凍らせた子供


身体の方は大して
成長したようには見え無いが
行方が解らなくなったあの日から

今日までどれほどの鍛錬を、積み重ねたのだろう


自分と似た髪の色をした少年が
誰もが成し得なかった
『史上最年少隊長』と言う称号に挑もうとしている

試験管はが勤めるとは言え
浮竹は歳の離れた弟との再会の様で
なにやら嬉しくなった





しかしその笑顔は







間も無く消え去る事になる










「この者は昨日すでに、死神試験及び
隊主試験を受け通っておるでな。
残す所後は実技のみ!!しかと見届けてやれい」



総隊長の声が響く後
自分の背丈ほどもある、長い刀を背負った少年は


そこに居る大勢の為では無く
自分が今、ここに辿り着いた事を

たった一人の者へ伝える為だけに



空高く届けと自らの名を叫ぶ








「俺の名は…日番谷冬獅郎だ!!」











太陽が一瞬、大きな影に消えた

冬獅郎が名を叫び
見上げた先に居たのは


結界が仰ぐ空に舞う、黄金色の大きな翼



存在さえ否定する様に、結界をするりと抜けて
闘技場へと舞い降りると

ゆっくりと羽はたたまれ陽炎のように消え
少年の前へ進み立つのは

小柄でありながら、凛然たる気振りの若い女性


漆黒の着物の上に
膝丈ほどの羽織が揺れる




「わたくしが試験官を勤めます十番隊隊長
四楓院ですわ。日番谷冬獅郎さん」




まっすぐに冬獅郎を見据えるその目からは
いつもの優しさを、窺い知ることが出来無い


静かに見守る各隊長の中
ただ一人、その名に首をかしげる浮竹が居た


「日番谷…冬獅郎……?」



その名に何かが、ひっかかる

とても重要な事が有るように思えて
浮竹は頭を抱えた


「浮竹隊長、大丈夫ですか?」

「…ああ」


顔色の悪くなった浮竹を案じて
覗き込むルキアに対して

浮竹は心ここに有らず
曖昧な言葉を返す



(日番谷冬獅郎君…なぜだ?何かが引っかかる…)




「やっと来たわね。まったくあの子は…」


悩む浮竹とは正反対に
乱菊が髪を書き上げながら、呟いた



「京楽隊長、様いつもと様子が違いませんか?」


始めて見る、「隊長」である時の
七緒は驚いた様子で京楽に問う
京楽は珍しく真面目な顔をし、暫く何かを考えた後
静かに見守るようにと答えた



は今、王族特務と護廷十三隊を掛け持っておる」


何も言わず二人、時が止まったように
目線だけが交差する冬獅郎と
山本元柳斎重國が声を掛けた





「王族特務…十番隊隊長…四楓院家…
…全く。えらっそうな肩書きだらけじゃねえか」


「おぬしの実技試験には、無比の試験官じゃ。
さて、双方準備は良いかの」




冬獅郎は自分の身の丈より僅かに長い
刀の柄に手をかけた



「抜け、!!悪いが加減する気はねぇぜ?」



冬獅郎の声を受け、背負う鞘は
呪縛を解くかのように、刀身を露にさせて行く


冬獅郎がゆっくりと構える長い刃と
真っ直ぐに見据える視線の先は

ただそこだけを目指して走り続けてきた


あの日空へと手放した天女



めぐり逢えた再会は
試験と言う名の大きな壁


たとえ刃を交えても
この手に掴むためには、超えなければならない





は冬獅郎の刀に目をやる事も無く
短刀を持った左手を、ゆっくりと前につき出して
鞘に指をかけると

静かに眼を閉じて天を仰ぐ




いつもと様子が違うよりも
を前に、臆する色無く言葉を発する冬獅郎に
乱菊は興味を持った


「それにしても口の悪い子ね〜
統学院時代からああなの、ルキア?」

「ええ。とんでもなく生意気なクソガ…い、いや何でも有りません!!」

「へぇえ〜?とは正反対ね」




うっかり本音を言いかけ、大慌ててで
口をつぐむルキアに、乱菊は笑って返す

おろおろしながら滝汗をかくルキアの隣では
そんな二人のやり取りさえ、全く耳に入っていない
浮竹の悩みが次第に


避けては通れない中枢の
確信へと変わり行く





が試験官…受験者は日番谷冬獅郎君…冬獅郎…
…とうしろう……とうしろう?)



が仰ぐ空に雲がかかり
穏やかな日差しは轟きに変わる




「抜かねえなら先に解かせてもらうぜ!
お前のその凍りついた心ごと砕いてやる…」


冬獅郎の吐き出す息が白く見える

結界内の気温が下がり
冷たさが徐々に、空気を張り詰めてさせて行く



(この光景、まさか…あの斬魂刀!!)
















「霜天に坐せ……氷輪丸!!!」
















それはこの者が、隊主試験を受けるに値する
力を持つ者だと言う事を
皆に知らしめすには、十分過ぎる光景だった


目の前に現れた事実の衝撃に
震える身体を押さえ隠した


たった一人の者を除いて



天候を司る氷の龍の出現は
尸魂界全土の空に、隊主試験の始まりを教えた

















サイトオープン前からずっと用意していた再会の山場に
やっと辿り着きました。
あと残り2話で完結します。(ひょっとしたら3話に増えるかも…)
もう暫くお付き合い頂ければ幸いです。

2005.11.14
十番隊隊主室 一片



再会と壁は試験